MC12から始まった
エンツォフェラーリをベースとしたマシンをFIA GT選手権に導入する予定だったが、諸事情でキャンセルとなってしまいました。代わりにエンツォフェラーリの構成部を流用したレースカーが開発されました。
当初レースカーの名前は「MCC」(Maserati Corse Competizione )と呼ばれていました。これがのちに改められ、『MC12』となっています。
このMC12が発表されたのが、マセラティ創立90周年に当たる2004年のジュネーブショー。フェラーリがエンツォフェラーリを発表したのが同社創業55周年という事なので、マセラティの歴史がいかに古いかという事がわかります。
価格はおよそ1億円、2004年に30台(うち5台は販売用ではない)、2005年に25台が生産されました。
MC12の構造・スペック
ほとんどがエンツォフェラーリと同様となっていますが、細かな違いがあります。
オリジナルのマセラティMC12は、モデネーゼトライデントを世界中のサーキットで優勝者の輪にもたらし、新しいマセラティMC20のインスピレーションとして機能しました。MC12、またはマセラティコルス、12はそのシリンダーの数を表します。
MC12のボディー
シャーシはカーボンモノコックを基本とし、ノーメックスハニカム構造を採用。レースカーという事もあり、安全のためにロールケージを備えています。
フランク・ステファンソンによって設計されたボディは、全長5,143mm、全幅2,096mm、全高1,205mmとエンツォフェラーリ(全長 4,702mm全幅 2,035mm全高 1,147mm)より大型化されています。重量配分は前41%:後59%。
ボディはカーボン製で、意外ですが着脱可能なルーフを備えています。
ボディカラーは「Bianco Fuji」と呼ばれる、マセラティブルーとホワイトのツートンカラーのみで、このボディカラーのネーミングは、その名称からもわかるように日本の富士山に由来しています。
MC12のエンジンと駆動系統
エンツォフェラーリ用のエンジンをベースとした6.0リッターのV型12気筒DOHCエンジンを搭載。最高出力は632PS/7,500rpm、最大トルクは66.5kg·m/5,500rpmを発生し、0-100km/h加速3.8秒、0-400m11.3秒。最高速度は330km/hに達します。
トランスミッションは「カンビオコルサ」と呼ばれる6速セミATで、ギアチェンジの時間はわずか0.15秒。シフトはパドル式が採用されています。
サスペンションはダブルウィッシュボーン式を採用し、フロントのみ車高などをボタンで調整できる様になっています。
ブレーキはブレンボ製でドリルドディスクに前6/後4ピストンキャリパーを装備。「スポーツ」と「レース」(TCSをオフにした状態)の2つのモードから選択可能です。
インテリアについて
ホモロゲーションモデルであるにもかかわらずインテリアは豪華で、マセラティブルーに染められたレザー、アルミ・カーボン素材で構成されています。シートはスパルコ製のセミバケットシートを採用。センターコンソールにはイグニッションボタンと、マセラティではお馴染みの楕円形のアナログ時計に加え、車名・シャーシナンバー・オーナー名がローマ字で刻印たプレートが取り付けられます。エアコンは装備されますが、オーディオの設定は有りません。
MC12ストラダーレ
マセラティは、MC12ストラダーレバージョンを50ユニット、コルスバリアントを12ユニット生産しました。48バルブ、ダブルオーバーヘッドカムシャフト、ドライサンプオイルシステムを備えた65度V12エンジンを採用。エンジンは、ストラダーレで630馬力(469kw)、コルスで約750馬力(559 kW)を発生させます。
ストラダーレは、カーボンファイバーモノコックにより、車重は1,335kgと軽量。サスペンションはプッシュロッド式が採用されています。タイヤサイズは前245/35と後345/35。
MC20
マセラティMC20(マセラティコルセ2020)にはV6エンジンの他、EVも設定される予定となっています。生産はマセラティモデナ工場が行う事となっています。
V型6気筒エンジン
2020年7月1日に発表されたマセラティはMC20用の6気筒エンジン。
ドライサンプ、ツインスパーク、プレチャンバー点火システムを備えたバンク角90度の3リッター(2,992 cc)V型6気筒ツインターボエンジン。エンジンの重量は220 kgで、7,500rpm時に最高出力630PS(463 kW; 621 hp)を発生します。これはリッターあたり210hp(156 kW)という数値となっており、スーパーカーと呼ぶのにふさわしいスペックではないでしょうか。最大トルクは3,000〜5,500rpm時に730Nmとなっており、レッドゾーンは8,000rpmからとなっています。
マセラティはこのエンジンが「100%マセラティ」であると主張しましたが、メディアは「フェラーリF154エンジンとアルファロメオ690Tエンジンとのつながりを説明するのは簡単で、関係性はある。」と主張しました。エンジンの90度の角度の比較は、フェラーリのエンジンで見られたものと同じであり、8,000rpmの回転数制限もフェラーリSF90ストラダーレと同様。「1-6-3-4-2-5」の点火順序は、アルファロメオジュリアとアルファロメオステルヴィオに見られるF154ベースのV6エンジンと同じ仕様となっています。
トランスミッション
V型6気筒エンジンに組み合わせられるのは8速デュアルクラッチ。このクラッチを介して、動力は後輪に伝えられることとなります。
ボディの特徴
全長:4,669 mm、全幅: 1,965 mm、全高1,224 mmとなっており、ホイールベースは 2,700 mm。車両重量は1,500 kg。
スーパーカーらしいスタイリッシュなボディー形状で、ドアは跳ね上げ式のバタフライドアが採用され、これもスーパーカーらしさにひと役かっています。
インテリア
インテリアがアルカンターラのアクセントで、主にカーボンファイバーで構成されたステアリングホイールを備えています。TFT10.25インチのデジタル計測器クラスターと10.25インチのインフォテインメントスクリーンを装備し、現代のスーパーカーらしいインテリアとなっています。シートはボルスターとヘッドレストに革のシート面があり、中央のシート面はアルカンターラで構成されており、高級感とスポーティーさを兼ね備えたものとなっています。
エンジンのみを切り取ると確かに、このテクノロジーはフェラーリのフォーミュラ1やアルファロメオの技術に由来しますが、100%マセラティの魂が宿っていることは否定できません。